Claude Dispatchとは? — スマホからPCのAIを遠隔操作する機能
「外出先からPCのAIに作業を頼めたらいいのに」——そんな願いに応える機能が、実用段階に入りつつあります。
2026年3月17日、AnthropicがClaude Coworkの新機能「Dispatch(ディスパッチ)」をリサーチプレビューとして発表しました。スマホからPCのClaude Coworkをリモート操作して、ファイル検索やメール要約などのタスクを実行できる機能です。
さらに3月23日には、Computer Use(画面操作機能)との統合がリリースされ、ユーザー不在中にPC上のアプリをClaudeが操作できるようになりました。リリースからわずか1週間で、Dispatchの活用範囲は大きく広がっています。
ただし、できることと、まだできないことの境界線ははっきり存在します。この記事では、Dispatchの仕組み・セットアップ手順・実際のテスト結果・Computer Use統合の詳細・料金・制限事項まで、2026年3月時点でわかっている情報を整理しました。
Cowork・Dispatch・Computer Useの関係
Dispatchを理解するには、まず「Cowork」を知っておく必要があります。
Coworkは、Claude Codeのエージェント機能をClaude Desktopアプリで使えるようにしたものです。ターミナル操作なしで、デスクトップアプリ上からファイルの読み書きやブラウザ操作をAIに任せられます。
Dispatchは、このCoworkの「モバイル拡張」です。PCで動いているCoworkセッションに、スマホからアクセスしてタスクを指示できます。
そして3月23日に統合されたComputer Useは、Claudeが実際にPC画面を「見て」操作できる機能です。Dispatchと組み合わせることで、外出先からスマホで「あのアプリを開いて操作して」と指示を出せるようになりました。
| 機能 | 何ができるか | 操作する場所 |
|---|---|---|
| Claude(チャット版) | 質問への回答・文章生成 | ブラウザ / スマホアプリ |
| Claude Code | PC上のファイル操作・コード実行 | ターミナル |
| Cowork | Claude CodeをGUIで利用 | デスクトップアプリ |
| Dispatch | Coworkにスマホからリモート接続 | スマホアプリ |
| Computer Use | PC画面の操作(クリック・入力等) | Cowork / Dispatch経由(macOSのみ) |
つまり、Dispatchを使うと外出先のスマホからPCに「あのファイルを探して」「メールを要約して」と指示を出せます。さらにComputer Use統合後は「Excelを開いてデータを整理して」といった画面操作の指示も可能になりました(macOS環境のみ)。
実行環境は隔離されたVM(仮想マシン)上で動作するため、PC本体のシステムに直接影響を与えにくい設計になっています。また、サブエージェント連携により、複数のタスクを並列で処理することも可能です。
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Dispatchの始め方 — セットアップ5ステップ
Dispatchのセットアップは、QRコードでスマホとPCをペアリングするシンプルな手順です。所要時間は約90秒〜2分で完了します。
事前に必要なもの
- PC: macOS または Windows(x64のみ。arm64は執筆時点で非対応)
- Claudeデスクトップアプリ(最新版)がインストール済み
- Claudeモバイルアプリ(最新版)がインストール済み
- 対応プラン: ProまたはMax
- PCが起動していて、アクティブなインターネット接続があること
セットアップ手順
- Claude Desktopアプリを最新版に更新する
- モバイルアプリも最新版に更新する
- デスクトップアプリで「Cowork」タブを開き、「Dispatch」オプションを選択する
- 表示されるQRコードをスマホでスキャンしてペアリング
- ペアリング完了後、モバイルアプリのサイドバーにDispatchのエントリが表示される
ここまでできれば、スマホからPCのCoworkセッションにアクセスしてタスクを指示できるようになります。
Windows環境での注意点
Dispatch本体はWindows x64に対応しています。ファイル検索や要約といった基本的なDispatch機能はWindowsでも利用可能です。
ただし、3月23日に統合されたComputer Use(画面操作機能)はmacOSのみの対応です。Windowsでは画面操作系のタスクは実行できません。この点は後述の「Computer Useとの統合」セクションで詳しく解説します。
実際に何ができる? — MacStoriesのテスト結果から読み解く
「仕組みはわかったけど、実際どこまで使えるの?」という疑問に対して、テックメディアMacStoriesが12タスクで検証しています。
このテストは3月17日のリサーチプレビュー時点、つまりComputer Use統合前に実施されたものです。
結果は成功率50%。半分は動いて、半分はうまくいかなかったという率直な結果でした。
成功したタスク
- PC内のファイル検索
- Notionページの要約
- メールの要約
- URLの追加
- スクリーンショットの検索
失敗したタスク
- アプリの操作
- iMessageの送信
- Todoistとの連携(エラー発生)
- Terminal / Safariの操作
テスト結果の読み方
傾向がはっきりしています。「ファイル検索」「データの要約」など、読み取り系のタスクは比較的安定している一方で、「アプリを操作する」「外部サービスと連携する」タスクは不安定です。
「読み取り系は安定、操作系は発展途上」というのが、現時点での実力と考えてよさそうです。
なお、3月23日のComputer Use統合後は、アプリ操作系タスクの成功率が向上している可能性があります。ただし、統合後に同規模のテストが公開されているわけではないため、これはあくまで推測です。現時点では「PC内の情報を外出先から確認・要約する」用途が最も安定した使い方といえます。
Computer Useとの統合 — 何が変わったのか
2026年3月23日、Dispatchにとって最大のアップデートがリリースされました。Computer Use(画面操作機能)がCoworkに統合され、Dispatchから利用できるようになったのです。
Computer Useで可能になったこと
Computer Useは、Claudeが実際にPC画面を「見て」操作できる機能です。マウスの移動・クリック・キーボード入力・スクリーンショットの取得といった操作を、人間の代わりにClaudeが実行します。
Dispatch経由でComputer Useを使うと、たとえば以下のようなことが可能になります。
- 外出先からスマホで「Excelを開いて、今月の売上データをグラフにまとめて」と指示
- 「Slackの未読メッセージを確認して、重要なものだけ要約して」と依頼
- 「ブラウザで特定のサイトを開いて、情報を収集して」と指示
Dispatch単体(Computer Use統合前)では、ファイルの読み書きや情報の要約が中心でした。Computer Useの統合によって、「画面を見て操作する」タスクにも対応範囲が広がったことになります。
macOS限定である点に注意
現時点で、Computer Use機能はmacOSのみ対応です。Windows環境ではDispatch本体(ファイル検索・要約等)は使えますが、Computer Useによる画面操作は利用できません。
Anthropicは今後のWindows対応について明言していないため、Windowsユーザーで画面操作機能を期待している方は、公式アナウンスを待つ必要があります。
セキュリティ面の強化
Computer Use統合に伴い、セキュリティ機能も強化されています。
- プロンプトインジェクション自動スキャン: 悪意あるWebサイトやドキュメントからの不正な指示を自動検出
- 新アプリへのアクセス許可要求: Claudeが初めて操作するアプリケーションにアクセスする際、ユーザーの許可を求める仕組み
PCを無人で操作させることになるため、こうした安全策が組み込まれている点は重要です。
料金プランとDispatch対応状況
Dispatch自体に追加料金はかかりません。Coworkの一部として提供されています。ただし、Cowork自体がPro以上の有料プランでしか使えないため、無料プランでは利用できません。
| プラン | 月額(税別) | 日本円の目安 | Dispatch | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 無料 | $0 | – | 非対応 | Cowork自体が利用不可 |
| Pro | $20/月 | 約3,000円 | 対応 | Dispatch・Cowork利用可能 |
| Max 5x | $100/月 | 約15,000円 | 対応 | より多くのリクエスト枠 |
| Max 20x | $200/月 | 約30,000円 | 対応 | Opus 4.6をフル活用可能 |
(日本円は1ドル=約150円で換算。為替レートにより変動します)
ProプランでもMaxプランでも、Dispatch機能はすでに利用可能です。「まずは試してみたい」という方は、月額$20のProプランから始められます。
Maxプランは、より多くのリクエスト枠と高性能なモデル(Opus 4.6)へのアクセスが特徴です。日常的にCoworkやDispatchを使いたい場合は、リクエスト制限に余裕のあるMaxプランが向いています。
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Dispatchの注意点・制限まとめ
便利な機能ではありますが、制限事項はまだ多いです。導入前に把握しておきたいポイントを整理します。
機能面の制限
- セッション間メモリなし: 前回の会話内容を次のセッションに引き継げない。毎回ゼロからの指示が必要
- セッション共有不可: 他のユーザーとDispatchセッションを共有する機能はない
- タスク完了通知なし: タスクが完了してもプッシュ通知は届かない。自分でアプリを開いて確認する必要がある
- 複数スレッド非対応: 同時に複数のタスクスレッドを走らせることはできない
動作環境の制約
- PCがスリープ・再起動すると中断: Dispatchはスマホからの指示をPC側で実行する仕組みのため、PCが止まればタスクも止まる
- Windows arm64非対応: ARM系プロセッサ搭載のWindowsマシン(Snapdragon搭載PCなど)では動作しない
- Computer Use(画面操作)はmacOSのみ: Windows環境ではDispatch本体は使えるが、画面操作機能は利用不可
セキュリティ関連
- VM分離: 実行環境は仮想マシン上で動作し、PC本体と隔離されている
- ファイル削除前に許可要求: 重要な操作の前にはユーザー確認が入る
- 会話履歴はローカル保存: やり取りの内容はPC側に保存される
- プロンプトインジェクション自動スキャン: Computer Use利用時に悪意ある指示を自動検出(3/23追加)
- 新アプリアクセス許可制: 初めて操作するアプリには許可が必要(3/23追加)
- 監査ログ未対応: 操作履歴を後から監査する機能はまだ提供されていない
- Anthropic公式は「エージェント的性質とインターネットアクセスによる固有のリスクがある」と明記している
日本語での利用について
Claudeの日本語能力がそのまま適用されるため、日本語でのタスク指示は可能です。ファイル検索のキーワードや要約の出力なども日本語で行えます。
OpenClawとどう違う? — ポジション比較
Dispatchと似た領域のサービスとして、OpenClawが存在します。両者のポジションの違いを整理します。
| 比較項目 | Claude Dispatch | OpenClaw |
|---|---|---|
| 提供元 | Anthropic(Claude開発元) | サードパーティ |
| 料金 | Claudeのプラン内(追加料金なし) | 独自の料金体系 |
| 常時稼働 | 非対応(PC起動が必要) | クラウド上で常時稼働可能 |
| セキュリティ | VM分離・プロンプトインジェクション対策・アプリ許可制 | サービスごとに異なる |
| セットアップ | QRコード1回で完了 | サービスによる |
| モバイル操作 | Claudeアプリから直接操作 | 別途アプリ/ブラウザが必要 |
| Computer Use | 対応(macOSのみ) | 非対応 |
| 段階 | リサーチプレビュー → Computer Use統合済み | サービスによる |
Dispatchの強みは「Claudeエコシステムとの一体感」と「Computer Useによる画面操作」です。Claudeを日常的に使っている人にとっては、追加のセットアップなしでPC遠隔操作が手に入る点がメリットになります。
一方、OpenClawの強みは「PCを起動し続けなくてよいクラウド常時稼働」です。外出中にPCの電源が落ちる心配がないのは実用上のメリットです。
「すでにClaudeを使っていて、PC遠隔操作を試したい」→ Dispatch
「PCの起動状態に依存しない常時稼働が欲しい」→ OpenClaw
という使い分けが現時点での判断基準になります。
よくある質問(FAQ)
Dispatchは無料で使えますか?
無料プランでは使えません。Dispatchの前提となるCowork機能自体がPro以上の有料プランに限定されています。最も安いプランはPro(月額$20、約3,000円)です。
WindowsでもDispatchは使えますか?
Dispatch本体はWindows x64環境で利用可能です。ファイル検索や情報の要約といった基本機能はWindowsでも動作します。
ただし、Computer Use(画面操作機能)はmacOSのみ対応です。Windowsでは画面を見て操作するタスクは実行できません。また、arm64(ARM系プロセッサ)搭載のWindowsマシンでは、Dispatch自体が動作しません。
PCがスリープ中でも動きますか?
動きません。Dispatchはスマホからの指示をPC側で実行する仕組みのため、PCがスリープ状態や電源オフの場合はタスクを処理できません。外出先からDispatchを使う予定がある場合は、PCをスリープさせない設定にしておく必要があります。
Computer Useとは何が違うのですか?
Dispatchは「スマホからPCにタスクを指示する通信の仕組み」、Computer Useは「Claudeが実際にPC画面を見て操作する機能」です。
Dispatch単体では、ファイルの読み書きや情報の要約が中心でした。2026年3月23日にComputer UseがCoworkに統合されたことで、Dispatch経由でもPC画面の操作(アプリの起動、クリック、入力など)を指示できるようになりました。
つまり、DispatchとComputer Useは競合する機能ではなく、組み合わせて使うものです。
日本語でタスク指示できますか?
はい、可能です。Claudeの日本語能力がそのまま適用されるため、「デスクトップにあるファイルを探して」「メールの内容を要約して」といった日本語での指示が通ります。出力も日本語で返されます。
こんな人におすすめ / まだ待つべき人
今すぐ試す価値がある人
- ProまたはMaxプランを契約中の方: 追加料金なしですぐに使い始められる
- 外出先からPC内のファイル検索・情報確認をしたい方: 読み取り系タスクは安定して動作する
- macOSユーザーでComputer Useを試したい方: 画面操作機能まで含めたフル機能を体験できる
- セキュリティ面を重視する方: VM分離・プロンプトインジェクション対策・アプリ許可制が標準装備
もう少し待ったほうがいい人
- アプリ操作を主目的にしている方: Computer Use統合で改善しつつあるが、まだ安定性にばらつきがある
- PCを常時起動しておけない方: スリープや電源オフでセッションが切れるため、運用が難しい
- Windows arm64環境の方: 現時点では非対応。公式の対応アナウンスを待つ必要がある
- タスク完了の通知が欲しい方: プッシュ通知機能は未実装。自分でアプリを開いて確認する運用になる
Dispatchは「完成品」ではなく「急速に進化している途中の機能」です。3月17日のリリースから3月23日のComputer Use統合まで、わずか6日で大型アップデートが入りました。今後もアップデートが続く可能性が高いため、現時点の制限がそのまま残るとは限りません。
まずはファイル検索や情報要約など、安定している用途から試してみて、アップデートのたびに使える範囲を広げていくのが現実的な付き合い方です。
最終確認日: 2026年3月27日


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